Sia 顔なきポップスターと12歳の天才ダンサー

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突然ですが、「Sia」の「Chandelir」が好きです。
アーティスト「Sia(シーア)」の曲「Chandelier(シャンデリア)」です。

曲はもちろんですが、このミュージックビデオに衝撃を受けました。

Sia / Chandelier

2014年に発売された、オーストラリア出身の女性シンガー・Sia(シーア)の代表曲の一つ「Chandelier(シャンデリア)」
「MTV video music awards」では「最優秀ビデオ賞」「最優秀振付賞」にノミネートされ、「最優秀振付賞」を受賞。
翌年の2015年「第57回グラミー賞」では「最優秀レコード賞」「最優秀楽曲賞」「最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンス」「最優秀ビデオミュージック」にノミネートされるほどの大ヒット。

日本では、2017年にハリウッド女優ナタリー・ポートマンが出演したクリスチャン・ディオールの香水「Miss Dior」のCMで使用され、再注目を浴びます。
そこで知った方もいるでしょうし、久しぶりに聴きたくなった方も多いのではないでしょうか?

この「Chandelier」は、過去にアルコール依存症という問題を抱えていたシーアが自身を投影した曲だと言われています。
歌詞は、アルコール依存症のパーティーガールのことが書かれていて、支離滅裂な感情から、精神状態が崩壊寸前であることが伺えます。

そんな重めの歌詞とは反対に、サビでは自由を得たかのような開放的なメロディーと叫びにも似た歌声に何とも悲しく美しいです。

【 Sia ( シーア ) 】 シンガーであり、ヒットメーカー

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1975年、オーストラリアで生まれたシーア。
1990年代、オーストラリアでアシッドジャズバンド「Crisp」のボーカルとしてデビュー。
解散後はイギリスに拠点を移し、ソロ活動をしながらアルバムを出し、シンガーとして順調にキャリアを築いていきます。

2010年に出した5枚目のアルバム「We Are Born」が母国のオーストラリアで2位を記録。
翌年には人気DJデイヴィッド・ゲッタとのコラボ曲「TITANIUM(タイタニウム)」が各国チャートのTOP10にランキングされるほどの大ヒット。
これでシーアの名が一気に世界に知れ渡ります。

その他にも、ビヨンセ、ブリトニー・スピアーズ、ケイティ・ペリー、リアーナ、クリスティーナ・アギレラ、フロー・ライダーなどの大物アーティストとのコラボや楽曲提供でヒットメイカーとしても有名に。

2014年にリリースした6枚目のアルバムの収録曲「Chandelier」が米Billbord200チャートで1位を獲得、世界的大ヒットとなりソロアーティストとしてブレイク。
2019年には初来日を果たし、フジロックフェスティバルにヘッドライナーとして観客を魅了、日本でもさらに注目を浴びるようになります。
2021年には初めて原案・脚本・監督を務めた「Life With Music」が公開されました。

「顔なきポップスター」の理由

そんな天才ポップスターはいつの日か「顔」を隠して歌うようになりました。

1997年、当時の恋人を交通事故で亡くしたシーアはアルコール依存症と処方薬の依存に溺れ、それから長年苦しむことになります。

その後、シンガーとしてヒットメイカーとしても大きな成功を収めたシーアでしたが、その成功の裏で、有名になることによって失われるプライベートやプライバシーに精神が不安定になります。
うつ病を患い遺書を書き自〇まで試みるところまで追い込まれました。

2012年、自身のメンタルヘルスを守るため、一切の表舞台から身を引き、制作側に回ることをTwitterにて発表。
ですが当時は「TITANIUM」がメガヒット中、リアーナ、ビヨンセ、マルーン5、ケイティ・ペリーへ提供した楽曲が軒並みヒット。
これにより、一時は身を引く予定でしたが、顔を出さないという条件で表舞台に立つ決断をします。
これが顔を隠すことになった経緯です。

それからは、口元だけを出した大きなオカッパのウィッグをかぶって表舞台に出てくるようになりました。
インタビューはもちろん、ライブや音楽番組のときもそのウィッグをかぶりそれ以外のときは後ろ向きで歌います。
「Chandelier」でグラミー賞にノミネートされたときのパフォーマンスでは、セットの壁と同化して後ろ向きで歌っていました。

【衝撃のミュージックビデオ】

MV「Chandelier」

顔を隠すようになってからは、シーアはセンターではなくステージの後方の端辺りで歌うことが多くなりました。
そして代わるようにメインで踊るのが、当時12歳だった少女のダンサー「マディ・ジーグラー」
Sia同様、オカッパのウィッグをかぶっています。(こちらは顔は出ています)

このマディが踊る「Chandelier」のMV(ミュージックビデオ)が当時話題になり、YouTube公開から1週間で650万回再生(2022年現在では24億回再生)を記録。マディはこのMVで一躍有名になりました。

シーア同様、金髪のオカッパのウィッグをかぶり、レオタードを着て、空き家のような廃れた家の中で曲の最初から最後までノンストップで踊り続けるというもの。
適当に踊っているのかと思いましたが、きちんと振り付けられた「コンテンポラリーダンス」でした。

目まぐるしく変わる奇妙な動きと表情に、バレエのターンやジャンプを混ぜながら感情をむき出して踊る少女に、とにかく度肝抜かれます。
漫画のような奇妙な笑顔や表情や動きに目が離せなくなりました。
何回も観てしまうほどの、中毒性が高いMVです。

振付はRyan Heffington(ライアン・ハフィントン)、この「Chandelier」のMVで「MTV video music awards/最優秀振付賞」を受賞しています。

【マディ・ジーグラー】 天才少女ダンサー

2002年、アメリカで生まれたマディ・ジーグラー。
2歳からダンスを始め、4歳でアビー・リー・ダンス・カンパニーに所属し、バレエ、コンテンポラリー、ジャズなどのダンスを学びます。

2011年、アメリカのリアリティ番組「ダンス・マム」(ダンサーを目指す娘とその母親の姿を追ったドキュメンタリー番組)に出演。
それを観ていたシーアがマディのダンスの才能に注目。直接TwitterでMVの出演を依頼しました。

マディはシーアと共に音楽番組やライブに出演、フジロックでは一緒に来日を果たしました。
その後も、シーアのミュージックビデオ4本(2022年現在)に出演。
マディはシーアを、「第2のお母さん」と呼ぶほど良好な関係を築いており、シーアが初監督を務めた映画「Life With Music」にも出演しています。

MV「The Greatest」

「Chandelier」の他に、衝撃を受けたマディ出演のMVです。

2016年にリリースされた「The Greatest」のMV。
監督:Sia、Daniel Askills 振付:Ryan Heffington

このMVは、同年フロリダ州にある同性愛者向けのナイトクラブ「Pulse(パルス)」で起きた銃撃事件の被害者たちへの追悼の意味を表わしていると言われています。
この事件では49人が犠牲となりました。(他に53人が負傷)。MVでも、マディを入れて49人のダンサーが登場します。

ビデオが始まると、涙を流しているかのようにLGBTの象徴でもあるレインボーフラッグカラーをマディが自分の顔にペイントします。
薄暗い家の中をマディを入れて49人のダンサーが踊り、最後は全員が折り重なるように倒れます。
その後ろの壁には銃弾の跡のような穴が多数にあり、周りにはナイトクラブを連想させるミラーボールが回っている。
これらのシーンが事件をオマージュしていると言われています。

最初と最後の子供たちが倒れているシーンで、電子音のようなノイズのような音に若干恐怖を感じました。
子供たちが目覚めたとき、その音は心臓が動くかのようなリズムに変わります。
音の高低は違うけれど、心電図の心肺停止時に鳴るあの電子音に聞こえるからかもしれません。

あとがき

「Chandelier」で好きな歌詞があります。

I’m gonna live like tomorrow doesn’t exist (明日がないみたいに生きるの)
Like it doesn’t exist (明日がないみたいにね)

【引用】LyricsTranslate https://lyricstranslate.com/ja/sia-chandelier-lyrics.html

「明日がないみたいに生きる」という言葉は、「Chandelier」では自暴自棄や自〇を連想してしまいます。
明日に希望を見出せない、今日を生きるので精いっぱい、明日が来るのが恐い、でも生きようとしている。
人によっては、生きるとはそれほどまでに大変なことなのだと。

ですが、「つかの間の自由」とも解釈できます。
常に私たちは「明日」や「未来」に向かって、色々考えながら悩みながら我慢しながら生きています。
そんなこと何も考えないで今日を自由に生きる。
学校や仕事の休みの前日のような、休みよりも休みの前日の方が楽しいような。

2018年にシーアは、薬物やアルコールを絶ってから8年が経過したことを自身のTwitterでファンに報告しています。
苦しみから克服した、これからのシーアに注目です。

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